ご挨拶
当教室は歯科保存学教室が1960年に3分野に分かれ、総山孝雄教授が歯科保存学第一講座の初代教授に着任したことに始まります。その後、1982年に細田裕康教授、1995年には田上順次教授が着任しました。2021年からは島田康史が教授を務めています。
う蝕制御学分野は歯科保存学領域における世界屈指の研究拠点であり、数多くの研究成果と治療技術を開発し発信しています。
1970年代にはう蝕(むし歯)によって細菌感染した歯質を選択的に除去する方法を考案し、様々な形態の齲蝕に対して健全な歯質を保存し、接着性コンポジットレジンを用いて修復を行う、審美的で痛みの少ないう蝕治療を開発しました。1990年代後半にはコンポジットレジンの歯質接着性を高める研究を産学連携で展開し、象牙質プライマーの開発と歯質接着機構の解明を行いました。また接着修復材料の接着性を高い精度で評価する方法として、歯の微小領域で計測を行う微小引張接着試験を開発しました。この試験方法は歯科医学領域におけるスタンダートな試験法として世界各国の研究機関で採用されています。さらに2000年代には微小剪断接着試験を開発しました。
現在、う蝕によって脱灰した歯質を修復材料の高機能化によって自己修復する材料や、う蝕によって失われた歯質を再生する治療法の開発に取り組んでいます。また、う蝕を早期に高い精度で発見し、疾患の進行を先制的に抑制する研究を行っています。放射線を使わずに、光を用いて歯の精密な断層画像を撮影する装置を産官学連携で開発しました。放射線による被曝がないため、妊婦や小児も安心して繰り返し使用できるう蝕の画像診断として注目されています。
う蝕は現在も世界に蔓延する疾患であり、日本のような先進国では高齢者の齲蝕が増加しています。治療が難しく再発しやすいことから、その対策は歯科医療における大きな課題となっています。
う蝕制御学分野の教室員は保存修復学の研究および臨床の発展に努め、また教育の推進に励んでおります。う蝕制御学分野の活動にご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
東京医科歯科大学 う蝕制御学分野
教授 島田 康史